和紙コラム vol.4和紙の手紙〜五感に響くメッセージ〜
株式会社WACCA JAPAN 森崎真弓
WACCA JAPAN(ワッカジャパン)の森崎です。
2019 年、あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い致します。
2019 年最初の和紙コラム、4 回目となる今回のテーマは「手紙」です。
年賀状書きに苦労された方や、返信に頭を悩ませている方もいらっしゃることと思います。
またすぐ先にはバレンタインデーや卒業・入学シーズンが控えており、お手紙の出番が増える時季でもあります。
かつて平安時代の貴族たちは、相手に思いを伝えるために、季節に合わせた美しい和紙を選び、和歌を書き香りをたきしめた文を送っていました。
視覚のみならず、手ざわりや嗅覚にも訴える、まさに五感に響く手紙を送り合っていたのです。
現代においては瞬時に思いを伝えられるメールやSNSの便利さもよいものですが、じっくりと時間をかけた手書きの手紙はむしろ新鮮で、相手を喜ばせる最高の伝達方法ではないでしょうか。
その演出にもっとも気軽にチャレンジできるアイテムは…そうです、和紙です!達筆ではなくても、文章を書くのが苦手な方でも活用できる、簡単な和紙の手紙アレンジをいくつかご紹介いたします。
【その1:耳付きの和紙便箋を作る】
和紙らしい風合いをもっとも感じられるのが「耳」の部分。カッターでカットせずに「水切り」すると、耳付きの便箋を作る事ができます。
(1)カットしたいラインに定規をあて、ヘラなどで筋をつける
(2)筋をつけたラインに添って、水をつけた筆でラインを引く
(水を紙に含ませながら線を書くイメージです)
(3)線に沿ってやさしくちぎる
(ちぎりにくい時は水の量を増やしたり、和紙に水分が浸透するのを待ってから
試してみてください。紙の目や紙の種類によってちぎりやすさが違います)
この「水切り」の方法は「くいさき」ともいい、紙と紙を平滑につなげる表具の技法としても活用されています。便箋は4方向すべてを「水切り」するのもよいですし、1方向だけ耳にするのもおもむきがあります。
【その2:ポストカードを染める/紅茶染め】
身近な材料で和紙を染めて、ナチュラルカラーのポストカードを作ってみましょう。
写真は飲み終わった紅茶の葉を再度煮出した液で、和紙のポストカードを染めたものです。たっぷり味わったあとの茶葉でも十分に着色できます。数分漬け込み、染まったら1枚ずつ重ならないように天日干しします。染めムラも美しく、染めたてはほんのりと紅茶の香りも楽しめるオリジナルポストカードの出来上がりです。
【その3:墨汁で描き染める】
「ありがとう」「おめでとう」などのひとことだけを添えたい時、無地のハガキ一面を埋めるのは気が重い……ということはありませんか。
そんな時にお試しいただきたいのが「墨汁描き染め」。絵手紙の感覚で、絵心がなくても楽しめるお手軽な方法です。
水を入れた容器に墨汁を少々加え、薄い墨色を作ります。あとは染めるように筆で塗るだけ。ストライプや、チェック柄、あるいはランダムな線を書き重ねたり。うんと薄くして、全体を染めたり。ぽたぽたっと上からしずく状に垂らしたり…。
むずかしく考えず、思い思いに自由に筆を動かしてみてください。墨汁以外にもペン字用の水性インクでも同様に楽しめます。濃度を変え濃淡をつけても面白いです。
最後に、和紙と筆記具の相性についてのお話です。
和紙はにじみやすいイメージがあるかもしれませんが、楮、三椏、雁皮などの昔ながらの和紙は比較的にじみにくい場合が多いです。上の写真は楮100% の薄紙に万年筆の水性インクで書き試したものです。繊維がペン先にひっかかることもありますが、インクをすっと吸い込み、洋紙にはない書きやすさがあります。木材パルプを主原料とした和紙はサイズ処理されていないことも多く、にじみやすいものも多いです。試し書きができない場合は、ほとんどの和紙で問題なく書く事ができる油性ボールペンを使われるとよいでしょう。