第20回企画展「知られざる複製の実力 コロタイプと文化財」

虎屋 京都ギャラリー

 京都御所の西、烏丸通と一条通の北角にとらや 京都一条店がある。そこを少し西に入る。見えてくるのは虎屋菓寮京都一条店と真っ白な壁の蔵のような造りのギャラリー。ここでは、お菓子をいただいた後、美術や工芸を楽しみながら豊かな時間を過ごすことができる。

複製なのに、この迫力は⁉

 10月26日から12月1日までは、「知られざる複製の実力 コロタイプと文化財」が開催されていた。秋の日差しが入る廊下からギャラリー内に入ると、大迫力の風神雷神図が出迎えてくれる。もちろん、複製であり屏風ではないが、普通の印刷やデジタルのカラー出力ではない。雲の様子や金箔の感じ、そして美術の教科書からは伝わってこない瑞々しさやエネルギーも感じる。これは何?どこが違う?

画像の代替テキスト分割されて出力された風神雷神図の複製

本物に迫る、コロタイプが持つ魅力

 「これはコロタイプという手法でつくられたものです。コロタイプの歴史や印刷の原理や道具なども展示しています」と虎屋 京都ギャラリーの相田氏。
 パネルの説明によると、現在広く使われているオフセット印刷との違いは、小さな点の有無。オフセット印刷は青、赤、黄、黒という4色の小さな点が集まり画像をつくっているが、コロタイプは感光剤の含まれたゼラチンをガラス板に塗布し、それにネガを置いて紫外線で焼き付けて、印刷のためのゼラチン版をつくる。この時できる細かなしわにインキが入り込み、滑らかな画像をつくりだす。なるほど、普通の印刷では難しい色の諧調も、コロタイプならオリジナルに近い自然な色で濃淡表現ができるということらしい。
 そしてギャラリーには法隆寺金堂壁画、高松塚古墳壁画、伝源頼朝像、蒙古襲来絵詞、さらに御堂関白記などが展示されている。いずれもコロタイプで複製されたものだが、間近で見てどれだけの人が複製だと分かるだろうか。

画像の代替テキスト昭和10年に撮影されたネガからつくられた法隆寺金堂壁画の複製

コロタイプを下絵によみがえった法隆寺の金堂壁画

 「こちらの法隆寺の金堂壁画は、昭和10年に便利堂様が原寸大で分割撮影したものを、コロタイプにしたものです」(相田氏) 
 その後、昭和24年に金堂壁画は火災に見舞われ焼損。昭和29年に壁は修復されたが何も描かれていない状態だった。そこで、昭和42年にもう一度、コロタイプを下絵にし日本画家の方々の協力によって壁画を再現する運びとなった。再現された壁画は、今も世界中から訪れる観光客を迎えている。
 法隆寺の金堂壁画は、インド・アジャンター石窟群の壁画や敦煌莫高窟と同じように貴重な文化遺産だ。その前に佇めば、あたかも何事もなかったように、1400年の時空を超えて天平の世界がよみがえる。

左は高松塚古墳壁画、右は蒙古襲来絵詞、その奥には御堂関白記の複製が展示されている

文化財の複製に欠かせないコロタイプ

 こうした経緯があり、また昭和40年頃からはカラーもできるようになり、ますますコロタイプは文化財の複製に欠かせないものとなった。高松塚古墳の壁画や蒙古襲来絵詞もカラーで再現されればこそ、立体感も出るし迫力も違ってくる。
 虎屋 京都ギャラリーでは、文化的にも社会的にも意義のある技術、それも京都で守り続けている歴史ある技術をぜひ広く知っていただきたいと今回の展示会を開催されたという。また、虎屋ならではの貴重な資料や羊羹写真のコロタイプも展示している。そこには、伝統を重んじ、文化を大切にしてきた虎屋の考えが、そこはかとなく感じられる。虎屋 京都ギャラリーの今後の展示企画にも注目していきたい。


虎屋 京都ギャラリー

  • 〒602-0911
  • 京都市上京区一条通烏丸西入広橋殿町400
  • 電話:075-431-4736
  • 開廊時間:企画展開催時のみ10:00~17:00 入場無料
  • https://www.toraya-group.co.jp/
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jaen