和紙のオフセット印刷

Kizuki.Japan編集部

 和紙作家ハタノワタル氏から依頼された手漉き和紙へスミ1色でのオフセット印刷。これは通常の仕事ではなく、トライアルということで進めていた。当初社内で何とかなると考えていたが、プリンティングディレクターに相談したものの色よい返事はなかった。手漉き和紙特有の微妙な厚さの違い、耳を付けたまま紙詰まりせず無事印刷できるか、またローラーに紙粉が付いた場合はメンテナンスが大変になるなど、問題は山積していた。

 そこで、このプロジェクトの立ち上げから相談している外部の方々に相談。活版印刷と1色のオフセット印刷を行っている印刷会社を紹介していただき、3月26日にその印刷会社を訪れた。その場で和紙を確認してもらい、これなら何とか刷れるだろうとの言葉をもらう。よかった!とにかく一歩前進だ。ハタノ氏から送っていただいた和紙を断裁して持ち込み、4月3日印刷という運びとなった。

 4月3日の夕方、和紙を持って印刷会社に向かう。印刷原稿の海の写真データは、すでに送ってあり製版は終わっていた。印刷は133線。最初に普通紙を使い、仕上りを見る。普通紙と和紙を混ぜながら印刷機に通す。あっという間に流れていくので、記録用の写真や動画を撮るスタッフも焦る。それでもスミ1色の一度刷りは、思った以上にきれいだった。写真の波の感じと和紙の質感が上手く活かされているように思えた。

 次にハタノ氏の希望により二度刷りを行ってみる。インクの滲み具合を確認したいということだった。今回はトライアルなので、耳の付いた和紙を使っている。紙のサイズが均等でないため版ズレのおそれがある。結果版ズレしても問題はないが、印刷会社の方はそれを防ぐように細かく調整してくださる。それでも何枚かはズレてしまった。全体に少しべったりとした印象になり、微妙な階調が再現されていない。

スミ一色でのオフセット印刷(一度刷り)

一度刷り(左)と二度刷り(右) 一度刷りの方が鮮明に印刷されているのがわかる

 さらに、三度刷りを行ってみるが、紙詰まりが起きる。版ズレもひどく、モアレも起こっている。もちろんインクもかなり濃くなり、どす黒くなっている部分もある。そろそろ限界だろう。今回のトライアルはこれで終了。ハタノ氏には取材時にこの成果を報告しよう。
ハタノ氏の取材記事はこちら

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