和紙のこれまで
和紙は、日本の生活文化を代表するもののひとつ。かつては日常の隅々にまで、和紙が大切に使われていました。その歴史の特長など、和紙の基本知識をまとめました。
和紙とはどんな紙?
大陸から製紙法が伝わったのは、諸説ありますが、だいたい5〜6世紀といわれています。当時は非常に貴重な品物であり高度な技術でしたが、伝播したばかりの紙は強度・耐久性などが低く、品質の改良が繰り返されて日本独自の製法で進化していきました。当初は写経用や戸籍用に用いられ、平安時代になると貴族の使用が増え、室町時代には建築にも取り入れられました。江戸時代に入ると生産量が大幅に増加し、障子紙や傘などが庶民の生活にも溶け込んでいくようになりました。現在でも日本各地の和紙産地が点在しており、福井県の越前和紙、岐阜県の美濃和紙、高知県の土佐和紙のように、地名を付けて呼ばれています。
和紙の特長は?
和紙は天然の植物繊維を、漉くことによって繊維を絡ませることができるため、強靭で保存性に富んでいます。長く大事に使うことによって時間とともに味わいが出てくる、手に取るとすっと手になじむ、一枚一枚違った風合いがある、などの特長をもっています。世界からも注目され、最近では環境に配慮した素材として利用の幅を広げています。例えば内装材としてはカーテンや間仕切り用スクリーン、壁紙などに。照明器具のシェードとしても多く使用されています。
また、「和紙」と「洋紙」の違いは、「和紙」が日本独特の原料である楮(コウゾ)や三椏(ミツマタ)を用い手漉きで作られた紙、「洋紙」が明治初期に導入された木材パルプを原料とする大規模な機械漉きで作られた紙というように原料・製法によって区別しています。
和紙の原料とは?
和紙を作るには、「水」と「原料」、それに「ねり」と呼ばれる植物粘液の三品が必要です。「水」は不純物を含まない清くて透明な冷水が好ましく、一般には湧水や川の水を濾過して使用しています。
「原料」は、主に楮(コウゾ)、三椏(ミツマタ)雁皮(ガンピ)、の落葉低木の皮が使われます。いずれも繊維が長く強靱で、光沢があり、和紙の特徴である薄くて強い性質を持っています。
「ねり」は原料の繊維を水の中でよく分散させ、沈降して固まらないようにするために水に混ぜて使う粘液です。よく使われるのはトロロアオイという植物の根の粘液です。またノリウツギという植物の粘液も同じ用途に使うことができます。