月山和紙のあかりで、こころ休まるやさしい空間をつくりたい

月山和紙あかりアーティスト せいのまゆみ氏

 小さい頃は卓球一筋の体育会系少女だったという、せいのまゆみ氏。今でも卓球は好きで、地元の小さい子ども達に教えている。そんなせいの氏が、高校卒業後東京に出て最初に始めたのはお菓子作り。専門学校に通い、就職もしてパティシエをめざした。しかし軌道に乗らないことが多く、疲れて体調を崩してしまう。地元に戻って休んでいたせいの氏を癒やしたのが、古くから家にあった月山和紙の手触りだった。和紙を千切り、貼り合わせ、さまざまな表情・カタチを楽しむ。保育園のころ、風船に新聞紙を貼ってお面を作った記憶を頼りに、和紙でまあるいカタチを作って灯りをともすと、なんとも言えない柔らかい光の輪が広がった。

和紙あかりアーティスト誕生

 こうして月山和紙のあかり作りに夢中になったせいの氏。2000年頃から実家の旅館に和紙あかりを飾り、木の実や枯れ枝、古民具などを添えてディスプレイしてみた。すると、作り方を教えて欲しいという声が殺到。希望者を集めてワークショップを開くことになった。また、旅館に出入りしている家具職人に、仙台で個展をやってみないかと勧められ、恐る恐る開いてみると大好評。これがあかり作りを仕事にするきっかけとなった。

大井沢「自然と匠の伝承館」で展示中のあかりたち
旅館仙台屋にて

手漉き和紙職人、三浦氏との出会い

 当初、家にあった古い月山和紙だけを使ってあかりを作っていたせいの氏だが、人に教えるようになると、あっという間に紙が足りなくなってしまう。そこで、人づてに和紙を購入したり、和紙と画用紙を貼り合わせて使ったりもしてみたが、どうにも思うようなカタチが作れない。試行錯誤を続ける中、2004年、大井沢で月山和紙を継承していた三浦一之氏と出会う。
 「三浦さんの和紙を使って、その品質の良さと種類の多さにびっくり。千切ったときの毛羽立ちの美しさとか、貼り合わせてカタチを作っていく造形のしやすさが段違いなんです。もう他の紙には戻れなくなってしまいました」
 以来、三浦氏の紙を使って作品作りに邁進するせいの氏。三浦氏も、せいの氏の要望をきいて、和紙の素材や色の試作をするのが楽しくて仕方ないという。

千切ると伝わる、和紙の魅力

 せいの氏に、月山和紙あかりの今後について聞いてみた。
 「自分が月山和紙の後継者にならなくては、とも思っていたのですが、後継者のナオさん(シブヤナオコ氏)が来てくれたので、私はあかりを作り続けることかな。地元の子ども達にも和紙のことを知ってもらって。生活の一部として、和紙が生き残ってくれることを願っています」
 和紙が好きで、和紙の端切れを千切っていると、心がなごむ、というせいの氏。
 「ワークショップでも、初めに千切ってください、さわってください、っていうと、みなさん、夢中になって、会場が一気に和んだ雰囲気になる。和紙の魅力は、尽きることがありませんね」

大切にとってある和紙の端切れ和紙の端切れ。千切るとやさしい気持ちになる
シェードから透ける光が模様を写しだす 

月山和紙あかりアーティスト せいのまゆみ氏

月山和紙あかりアーティスト せいのまゆみ氏

山形県西川町生まれ。曾祖母の実家が和紙漉きをしていた事から幼少より月山和紙に親しむ。東京の製菓専門学校に進学、会社勤務を経て、2000年より実家である旅館仙台屋にて月山和紙を使ってあかりの制作を始める。作り方は、保育園の頃、風船に新聞紙を貼ってお面をつくった記憶をヒントに、独学で編み出したもの。月山和紙の柔らかくもコシの強い素材感、そこから透けて伝わるあかりは、あたたかく優しい世界を醸し出す。
facebook:せいのまゆみ 月山和紙の「あかりたち。」


月山志津温泉 旅館仙台屋 (月山和紙あかり展示販売)


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jaen