京都で学び、山形で独立。和紙の魅力を、身近なカタチにして届けたい
月山和紙 紙屋 作左ヱ門 シブヤナオコ氏
和紙との出合い
手仕事が好きで、いつかはものづくりの仕事がしたいと思っていたシブヤナオコ氏。いったんは陶芸を始めたが、究めるには、自分に立体物のセンスがないと気づいた。それに陶芸の担い手は大勢いるから、私がやらなくても誰かがやるだろう、とも考えた。逆に、近い将来滅んでいきそうな文化は何か、意識的に残さないといけないモノ。それは、和紙だ、と狙いを定める。試しに美濃の和紙の里スクールで、一ヶ月紙漉き体験をしたら、楽しくて楽しくて仕方なかった。そんな時、新聞を開いたら、“京都伝統工芸大学校「和紙工芸科」来春開校”という広告が目に飛び込む。「何コレ、私に行け、ってこと?」と入学を即断。京都の黒谷和紙の講師陣から和紙づくりの基本を学んだ。そのまま卒業後も9年間黒谷で修業を重ね、透かしや和紙を素材とした小物作りなど、さまざまな技法をマスター。2017年、山形県の西川町にやって来た。
西川町と三浦氏との出会い
「実は9年前、京都伝統工芸大学校を卒業したときに、月山和紙の三浦さんを訪ねているんです。父方の実家が西川町に程近い鶴岡市の田麦俣で、月山和紙のことは知っていたので。その時は弟子は取ってない、といわれ、そのまま京都に残って修行を続けたのです」
まる9年黒谷でお世話になったところで、全国手漉き和紙青年の集い、という集会で三浦氏に再会。今度は、そろそろ月山和紙の後継者を探しているが、来ないか?と誘われた。
「今思えば、いきなり学生上がりでここに来るより、スキルがついてから来れたので良かったかな、と。それが三浦さんの思うつぼだったのかもしれませんが(笑)」
小物づくりと、その販路
黒谷のときは、組合の中の一人だったので、自由に商品情報は発信していなかった。西川町に来てからは、「紙屋 作左ヱ門」という商号を掲げ、さまざまな和紙小物を作っては、手探りで販路を広げている。
「伝承館の工芸仲間に、『キノコなこけし』などで話題を呼んでいる菊摩呂こけし工房さんがいて。その方の紹介で、古今東西雑貨「イリアス」というセレクトショップとお付き合いができ、日本橋三越本店での「ほとんどキノコ展」という雑貨展に出品させて頂きました」
ほかにも、JR山形駅ビルの尚美堂や、天童の広重美術館、鶴岡に新しくできたスイデンテラスというホテルなどに、便箋やカード入れなどの和紙小物を出品している。
「私の商品はまだあまり出回ってなくて、色なんかもキマグレで一点ものを作ったり、一人で遊んでいます」と謙遜するが、どうしてどうして、手に取れば、しっかりした素材感、美しい色合い、そしてちょっとした遊び心で、たちまち欲しくなってしまうこと請け合いだ。
和紙作りを、地元にもっと根付かせたい
月山和紙を、これからどう育てていきたいか尋ねると、
「まだまだ知名度が低いですね。町内でも和紙を作っていることを知らない子供がいるので、まずは地元の子供たちに和紙の魅力を教えないと。そうして、ゆくゆくは山形全体に、月山和紙ここにあり、と発信したいです。せいのまゆみさんが、とても素敵な和紙あかりを作って、暮らしの中での和紙との付き合い方を提案しておられるように、月山和紙という品質のいい和紙を、素材でも、製品でも、ブランドとして高めていけるといいですよね」と目を輝かせた。
シブヤナオコ
大阪府出身。臨床検査技師として働く中、新聞でみた京都伝統工芸大学校・和紙工芸専攻開設の広告に触発され入学、和紙修業の道に入る。卒業後、月山和紙の三浦一之氏を訪ねるが、その時は弟子はとれないと断られ、京都の黒谷で9年間の修業を積む。2017年に三浦氏と再会、西川町の「自然と匠の伝承館」を拠点に和紙職人として独立する。商号は、父方の屋号を借りた「紙屋 作左ヱ門」。主に和紙小物の製造・販売に取り組んでいる。
Instagram:紙屋 作左ヱ門
紙屋 作左ヱ門(自然と匠の伝承館 内)
- 〒990-0721
- 山形県西村山郡西川町大井沢4110
- 営業時間:9:00〜16:30(4月〜11月)、10:00〜16:00(12月〜3月)
- 定休日:月曜(祝日のときは翌日)
- TEL:0237-76-2112
- FAX:0237-76-2088
- HP https://www.facebook.com/densyokan
山形県の月山と朝日連峰の見える自然に囲まれた工房で月山和紙(手漉き)の製紙と和紙製小物を制作しています。
紙屋 作左ヱ門 シブヤナオコさんが作る和紙グッズをKizuki.Japan ONLINE SHOPにて販売しています